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「会いたい」は電話で伝える!昭和の恋愛にあったドキドキ感

はじめに

今なら、「会いたいです」の一言は、指先ひとつで送ることができます。文面を何度も直して、落ち着いてから送信ボタンを押せばいい。

でも、あの頃は違いました。「会いたい」を伝える手段は、ほとんどの場合、家の電話。しかも、自分の声で、その場で言うしかありませんでした。

以前の記事では、手紙や待ち合わせも含めて、昭和の恋愛がロマンチックだった理由を振り返りました。今回は、その中から「電話」だけを取り上げて、あの一本の電話に詰まっていたドキドキ感を、じっくり思い出してみたいと思います。


ドキドキ1:かける前から、もう心臓が鳴っていた

番号は、指が覚えていた

好きな人の家の電話番号は、メモを見なくても、いつの間にか暗記していました。何度も頭の中で唱えて、何度も途中までかけては、やめたからです。

ダイヤルを最後の一つ手前まで回して、指を止める。受話器を置いて、深呼吸をして、もう一度。黒電話のダイヤルが、ジーッと戻っていくあの音まで、緊張を高めてくれました。

「何時にかけるか」で、まず悩んだ

夕食どきは迷惑だろう。遅すぎれば、家の人に失礼になる。お風呂に入っている時間かもしれない。

相手の家の暮らしを想像しながら、かける時刻を選ぶ。それは、電話をかける前から、もう相手のことを考えている時間でした。


ドキドキ2:最初に誰が出るか、分からなかった

「はい、〇〇でございます」の声で、すべてが決まる

呼び出し音が鳴っている数秒間が、とてつもなく長く感じられました。そして、受話器の向こうから聞こえてくる最初の声。

本人なら、ほっとする。お母さんなら、背筋が伸びる。お父さんの低い声だったときの、あの緊張感。思わず、そのまま切ってしまいたくなった経験のある方も、いるのではないでしょうか。

取り次いでもらうための、精一杯の挨拶

「夜分に恐れ入ります。〇〇と申しますが、△△さんはいらっしゃいますでしょうか」

この一文を、つかえずに言えるよう、かける前に何度も練習しました。好きな人と話すためには、まず、その家族にきちんと挨拶をしなければならない。礼儀正しさは、こういう場面で、自然と身についていったのかもしれません。

「少々お待ちください」の後の、長い長い数十秒

受話器の向こうで、「電話よー」と呼ぶ声が、遠くに聞こえる。階段を下りてくる足音。その音を聞きながら待つ数十秒は、ほかのどんな時間とも違う、特別な待ち時間でした。


ドキドキ3:声だけで、気持ちを伝えるしかなかった

言い直しも、下書きも、できなかった

電話には、送信前に読み返す時間がありません。口から出た言葉は、そのまま相手に届きます。

「あの、今度の日曜……もしよかったら」と、途中で言葉に詰まる。その詰まり方まで含めて、相手に伝わっていました。整った文章よりも、少し震えた声の方が、気持ちは正直に届いていたのだと思います。

沈黙にも、意味があった

「会いたい」と言った後の、数秒の沈黙。相手が何と答えるかを待つ間、自分の心臓の音が、受話器を通して聞こえてしまうのではないかと思うほどでした。

そして返ってくる、「……うん、いいよ」の小さな声。文字では決して味わえない、声の温度というものが、たしかにありました。

声の調子で、相手の気持ちが分かった

今日は元気そうだな。少し疲れているのかな。笑ってくれた——。絵文字もスタンプもない代わりに、声の明るさや間の取り方が、相手の気持ちをそのまま教えてくれました。


ドキドキ4:家族の気配の中で、話していた

電話は、家の真ん中にあった

多くの家では、電話は玄関や廊下、居間の隅に置かれていました。つまり、家族がすぐそばにいる場所で、好きな人と話さなければならなかったのです。

コードを目いっぱい伸ばして、廊下の端まで受話器を持っていく。背中を向けて、小さな声で話す。それでも、聞かれている気がして、肝心なことほど遠回しな言い方になりました。

「いつまで話しているの」の声

話が弾んでくると、決まって聞こえてくる、家族からの一言。電話代のこと、ほかの人が使えないこと。

「じゃあ、そろそろ」と言いながら、なかなか切れない。限られた時間だったからこそ、その数分間が、一日の中でいちばん大切な時間になっていました。


ドキドキ5:切った後まで、余韻が続いた

「そっちが先に切って」のやり取り

「じゃあね」「うん、じゃあね」と言ってから、どちらも受話器を置けない。「先に切っていいよ」「そっちが切って」。

今思えば、何とも気恥ずかしいやり取りですが、あの数十秒に、言葉にできない気持ちが、全部詰まっていました。

受話器を置いた後、しばらく動けなかった

電話を切った後、受話器に手を置いたまま、しばらくその場に立っている。さっきの声を、頭の中でもう一度再生する。

履歴も録音も残りません。残るのは、自分の記憶の中の声だけ。だからこそ、何十年経った今でも、あの夜の会話を覚えている方が、多いのではないでしょうか。


あの頃のドキドキを、今に活かすなら

メッセージで気軽にやり取りできる今は、たしかに便利です。相手の家族に緊張することもなく、文面をゆっくり考えることもできます。

その一方で、声で伝えるからこそ届くものがあることを、私たちの世代は、身をもって知っています。

マッチングアプリでも、やり取りが続いて、お互いに安心できる関係になってきたら、「一度、お声を聞いてみたいです」と、通話を提案してみるのも一つの方法です。もちろん、相手の気持ちとペースが最優先。無理に勧めるものではありません。けれども、声を聞いたときの安心感や、言葉に詰まる瞬間の正直さは、今の時代にも、きっと変わらず伝わるはずです。

あの頃、ダイヤルを回す指を震わせた勇気は、今も自分の中に残っています。


まとめ

「会いたい」を、声で伝えるしかなかった昭和の恋愛。一本の電話に、たくさんのドキドキが詰まっていました。

昭和の電話にあった5つのドキドキ:

  1. かける前から、もう心臓が鳴っていた
  2. 最初に誰が出るか、分からなかった
  3. 声だけで、気持ちを伝えるしかなかった
  4. 家族の気配の中で、話していた
  5. 切った後まで、余韻が続いた

便利になった今だからこそ、声で伝えることの温かさを、ときどき思い出してみる。あの頃の勇気は、これからの出会いにも、きっと力を貸してくれます。