またやられた。
Aさんとのやり取りがフェードアウトしてから少し経って、新しくBさん(仮名)とマッチングした。今度こそうまくやろうと思い、前回の反省を活かしてメッセージを丁寧に続けた。1回目のデートは悪くなかった。2回目も乗り越えた。
そして3回目のお誘いをしたところ、こう返ってきた。
「お気持ちはとても嬉しいのですが、お付き合いは難しそうだなと感じています。申し訳ありません」
夜の9時、仕事帰りの電車の中で、私はスマホをそっとポケットにしまった。
またか、と思った。でも今回は、それだけだった。
以前の自分だったら、どうしていたか
家に帰りながら、少し前の自分を思い出した。
日記①のころ——あのころの私は、マッチングアプリを始めたばかりで、断られることへの免疫がまったくなかった。最初にお断りのメッセージをもらったとき、何も返せなかった。「そうですか」と打ち込んで、送信もせずにアプリを閉じた。
日記②③のころは、少し慣れてきたかわりに、「なぜですか」「もう少し考えてもらえませんか」と食い下がることが増えた。今思うと恥ずかしい。断った側がどれだけ困っただろうか。
日記⑤のAさんのときは、メッセージを送っても返信が来なくなるフェードアウトで、「断る」という言葉すら来なかった。あれはあれで、消化しきれないモヤモヤが残った。
でも今夜は違う。Bさんは「難しそう」とはっきり伝えてくれた。はっきり断ってくれることは、ある意味で誠実さの表れだ。そう思えるようになっていた。
断られた後に、こう返した
家に着いて、ソファに座って、10分ほどスマホを置いた。
焦らなくていい。感情が落ち着いてから返す。そう決めていた。
10分後、私はこう打った。
「そうですか、わかりました。2回もお会いいただけて、楽しい時間をありがとうございました。どうぞお元気で。」
送信ボタンを押した。
特別なことは何も書いていない。責めていない。食い下がっていない。ただ、感謝と別れの言葉だけ。
正直に言うと、少し寂しかった。でもその寂しさをそのまま送りつけるのは、相手への迷惑だと思えるようになっていた。それだけでも、半年前の自分とは違う。
予想外の返信が来た
翌朝、起きてスマホを確認すると、Bさんから返信が来ていた。
断られた後に返信が来るとは思っていなかったので、少し驚いた。開いてみると、こう書いてあった。
「丁寧なお言葉、ありがとうございます。素敵な方だと思っていました。良いご縁がありますように。」
画面を見ながら、私は少しの間、動けなかった。
素敵な方、と言ってもらえた。
付き合うことにはならなかった。でも、最後にそう思ってもらえた。断られた後の対応が、自分への評価になって返ってきた。
なぜ、あの一言が響いたのか
少し考えた。
Bさんがなぜ返信をくれたのか、なぜ「素敵な方」と言ってくれたのか。
たぶんそれは、私が感情的にならなかったからだと思う。断られたことへの不満も、理由を聞くこともせず、ただ「ありがとうございました」と伝えた。それだけのことだったけれど、相手にとっては「この人は大人だな」と感じられるものだったのかもしれない。
断り方は誰でも気を遣う。断った後に相手がどう反応するか、みんな少し怖いはずだ。そこに責められるのではなく感謝の言葉が来たら、ほっとするし、相手を見直す。
断られた後の一言が、関係を終わらせる言葉ではなく、最後の印象を作る言葉になる——そういうことなのだと思った。
断り方・断られ方にも人間性が出る
このことを通じて、気づいたことがある。
断る側も、断られる側も、そこに人間性が出る。
Bさんは、「難しい」とはっきり伝えてくれた上で、「申し訳ありません」と添えてくれた。それは簡単なことではない。曖昧にフェードアウトするよりずっと勇気がいることだ。
私はそれに対して感謝を返した。お互いが丁寧だったから、最後にいい言葉で終われた。
マッチングアプリは「マッチするかどうか」だけがゴールだと思っていた。でも実は、どう接するか、どう終わるか、そのすべてが自分という人間を形作っていく。
撃沈続きの中で、初めて「成長できた」と感じた
日記①から数えると、半年近くが経つ。
この間に何人の方とやり取りしただろう。何人にお断りされただろう。自分もどれだけ失敗しただろう。
でも今夜、初めて「成長できた」と感じた。
うまくいったわけじゃない。付き合えたわけじゃない。また撃沈した。でも以前と違う自分でいられた。それが、半年分の積み重ねだと思えた。
人はゆっくり変わる。特に53歳にもなると、新しいことを学ぶ速度はそれほど速くない。でも確かに変わっている。今夜、それを感じた。
マッチングアプリを続けてきてよかったと思えた理由
少し前まで「こんな思いをしてまで続ける必要があるのか」と何度も思った。
撃沈するたびに落ち込んで、また立ち上がって、また失敗して。正直しんどかった。
でも今夜、Bさんのメッセージを読んで、続けてきてよかったと思えた。
うまくいかない経験の中で、少しずつ「どう振る舞えばいいか」を学んでいた。失敗のたびに気づきがあって、気づきのたびに少し変わっていた。
結果よりも、変わっていく自分を感じられることが、続ける理由になっていた。
まだ、出会いは続く
Bさんとの縁はなかった。でも今夜はそれほど落ち込んでいない。
ソファでビールを一本飲みながら、スマホのアプリを開いた。また誰かのプロフィールが流れてくる。知らない誰かが、同じようにスマホを見ながら誰かを探している。
53歳、バツイチ、撃沈続き。でも少しだけ、前よりましな自分になっている。
それで十分じゃないか、と思えた夜だった。
次回の撃沈日記⑦では、新たにマッチングしたCさんとのやり取りについて書く予定です。今度こそうまくいくのか——相変わらず手探りですが、続きをお楽しみに。