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撃沈日記④ 久しぶりに女性と二人で会った日、緊張で何も話せなかった話

前回の日記③で、デートのお誘いを断られた話を書いた。

あのときはさすがに落ち込んだ。「やっぱり自分には無理なのかも」と思いかけた。

でもその翌日、別の方からメッセージが届いた。少し前からやり取りを続けていたAさん(仮名)だ。「よかったらどこかでお茶でもしましょうか」と向こうから言ってくれた。

私は震える手でスマホを持ちながら「ぜひ」と返信した。

そして迎えたデート当日。これが今回の話だ。


待ち合わせに向かう電車の中で「よし、落ち着け」と自分に言い聞かせた

待ち合わせは駅前のカフェ、午後2時。

私は1時間前に家を出た。早すぎるのはわかっている。でも「万が一遅刻したら」と思うと落ち着かなくて、結果として駅の近くのコンビニで時間を潰すことになった。

電車の中で何度も鏡アプリを開いた。髪型は問題ない。シャツにシワはない。歯は…大丈夫だと思う。

そして自分に言い聞かせた。

「落ち着け。普通に話せばいい。ただのお茶だ。」

ただのお茶。そうだ、ただのお茶。

でも「ただのお茶」相手にこんなに心拍数が上がるのは、いつ以来だろうか。離婚してから5年。女性と二人で会うのは、今日が初めてだ。


相手を見つけた瞬間、安心と同時にさらに緊張した

カフェに着くと、Aさんはすでに席に座っていた。

プロフィール写真と同じ雰囲気の、落ち着いた印象の女性だった。私に気づいて軽く手を挙げてくれた。

「よかった、ちゃんと来てくれた」

そう思った瞬間、少し安心した。でもその安心は1秒も持たなかった。

椅子に座った瞬間に気づく。目の前に女性がいる。実際に。

画面越しではない。写真でもない。息をして、こちらを見ている生身の人間が、今まさに私の正面にいる。

頭が真っ白になる感覚というのは、こういうことを言うのだと思った。


注文のとき、声が震えた

「何にしますか?」とAさんが聞いてくれた。

「あ、えっと……コーヒーで」

声がかすれた。自分でもわかった。「あ、これは完全に緊張しているな」と客観的に思いながらも、どうにもできなかった。

店員さんが来て注文を告げるときも、なぜかたどたどしかった。ブレンドコーヒーをなぜか「ブ、ブレンドを」と言ってしまった。

Aさんは気づいていたかもしれない。でも何も言わず、にこやかに自分の注文を伝えていた。

この段階で私の心の中では「もうダメかもしれない」という声が鳴り始めていた。


会話のはずなのに、質問に答えるだけになっていた

Aさんは話しやすい方だった。

「お仕事は何をされているんですか?」「休みの日は何をされてますか?」「このあたりはよく来られるんですか?」

次々と質問を投げてくれた。

私はそれに答え続けた。「営業です」「家にいることが多いですね」「たまに来ます」。

……短い。短すぎる。

本来ならここから話を広げるべきだ。「Aさんはどうですか?」と返したり、「実は最近こんなことがあって」と別の話題につなげたりするべきなのはわかっている。

でもできなかった。緊張で頭が回らず、答えるだけで精一杯だった。

「私って今、会話してるんじゃなくてアンケートに答えてるな」と途中から思い始めた。


気まずい沈黙が何度も訪れた

Aさんの質問が途切れると、沈黙が来た。

最初の沈黙は10秒くらいだったと思う。でもその10秒が、30秒にも1分にも感じられた。

私は必死に何か話題を探した。天気。仕事。趣味。このお店の雰囲気。

何かを言おうとするたびに「これは面白いか?」「的外れじゃないか?」「変に思われないか?」というフィルターがかかって、何も出てこなかった。

結局「このお店、静かでいいですね」と言った。

Aさんは「そうですね、落ち着きますよね」と答えてくれた。

またしばらくして沈黙が来た。


用意していた話題が全部飛んだ

実はデート前日、私はちゃんと準備をしていた。

趣味の話。仕事で面白かったこと。最近行ったおすすめの場所。子どもの話をさりげなく出すタイミング。相手への質問リスト。

全部、紙に書いてスマホのメモにも入れておいた。

でも当日、それらは全部どこかに消えた。

脳がフリーズした状態で、事前に準備したことにアクセスする余裕など一切なかった。メモを見ようと思ったが、当然スマホを開くわけにもいかない。

用意周到だったはずの私は、完全な丸腰でデートの時間を過ごしていた。


解散後、家に着いてからどっと疲れた

1時間ほどでお茶は終わった。

「楽しかったです、またぜひ」とAさんは言ってくれた。社交辞令かもしれない。でもそう言ってくれただけでも救われた。

電車に乗って家に帰る途中、じわじわと反省が押し寄せてきた。

あのとき、もっと話を広げられたはずだ。沈黙のあとに笑いで場を和ませることもできたはずだ。用意していた話題を一つでも出せていれば、もう少しましな時間にできたはずだ。

家に着いた瞬間、ソファに倒れ込んだ。

疲れた。こんなに疲れたのは久しぶりだ。

緊張というのはこんなにエネルギーを使うものだったのか、と今さら知った。


でも、「次があれば」と思えた自分がいた

落ち込んだのは事実だ。

「あそこでこう言えばよかった」「もっとちゃんとできたはずなのに」という後悔が次々と浮かんでは消えた。

でも同時に、不思議と「また会いたい」という気持ちも残っていた。

うまくいかなかった。でも楽しくなかったわけじゃない。むしろ久しぶりに誰かと向き合って話して、それ自体が悪くなかった。

そして気づいた。緊張するのは、それだけ真剣だということだ。

どうでもよかったら、こんなに緊張しない。こんなに落ち込まない。

53歳になってこんな気持ちになれることが、少し意外だった。


次回に向けてやってみること

今回の一番の失敗は、「うまくやろうとしすぎた」ことだと思う。

失敗したくない、変に思われたくない、ちゃんとしなければ——そういう気持ちが強すぎて、かえって頭が動かなくなった。

次があれば(あってほしい)、今度はもう少しだけ「失敗してもいい」という気持ちで臨んでみたい。

沈黙が来たら「私、緊張してしまって」と正直に言ってみてもいい。用意した話題が出てこなくても、その場で思ったことを素直に話せばいい。

完璧なデートより、素の自分で話せる時間のほうが、相手にも伝わるものがあるはずだ。

Aさんからその後連絡が来るかどうか、私にはわからない。

でも今は、来てほしいと思っている。それだけで十分だ。


次回の撃沈日記⑤では、デートから数日後のLINEのやり取りについて書く予定です。果たして返信は来たのか——続きをお楽しみに。